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市民245名による深夜ホームレス調査・東京ストリートカウントから

東京2020オリパラレガシー「ホームレスの人々を包摂する優しい都市」へ

提言発表記者会見を行いました(2017年5月2日)

2017年5月12日(金)更新

2017年5月2日(火)公開

ARCHは2017年5月2日(火)、標題を旨とする記者会見を都庁記者クラブ(都庁第一本庁舎6F)で行いました。

会見では、ARCHがこれまで都内11区を対象に計9晩実施した、市民245名の参加による深夜の路上ホームレス調査「東京ストリートカウント」の結果・推計の報告と、2020東京オリンピック・パラリンピックレガシーに向けた提言を行いました。当日配布した資料は以下よりご覧い頂けます。また掲載頂いたメディア、及び会見で発表した内容を紹介します。

>【当日の配布資料】

当日の配布資料

◆発表資料

市民245名による深夜ホームレス調査・東京ストリートカウントから

東京2020オリパラレガシー「ホームレスの人々を包摂する優しい都市」へ

◆補足資料

>【掲載紙等】

 

◆2017年5月3日(水) 東京新聞 朝刊(一面)にて取り上げていただきました!

東京新聞: ホームレス、夜は2.5倍 20年五輪へ支援を提言: 社会(TOKYO Web)

◆2017年5月11日(木) 日本経済新聞 朝刊にて取り上げていただきました!

日本経済新聞: 都内路上生活者、一晩2650人 東工大など推計: 地域経済(電子版)

掲載紙等

>【発表内容の紹介】

市民245名による深夜ホームレス調査・東京ストリートカウントから

東京2020オリパラレガシー「ホームレスの人々を包摂する優しい都市」へ

発表内容の紹介

◆ARCHとは?

ARCH(アーチ:Advocacy and Research Centre for Homelessness)はホームレス問題についてのアドボカシー(政策提言)と研究を行う市民団体です。2020東京オリンピック・パラリンピックを機に東京がホームレスの人々を包摂する「優しい都市」となることを目指し、東京工業大学の都市デザインを専門とする研究者や学生が中心となって、大会5年前の2015年10月に設立しました。海外ではオリパラを機にホームレス政策が進んだ例があり、東京も2020年大会に向け、本気で支援に取り組むべきと私たちは考えます。「ホームレス状態が存在するときに、そこに住む皆が自分たちの問題と考え、その状態をなくすために働きかけ続ける社会」をビジョンに掲げ、ホームレス問題をめぐるオリパラレガシー創出を目指して、研究者や法律家、民間企業、行政等のプロボノボランティアや、ホームレス支援の現場ワーカーの方などと共に活動を行っています。

※ARCHについて更に詳細はこちらより

◆市民参加型の深夜ホームレス調査 東京ストリートカウント

オリパラレガシーへの第一歩として行ったのが市民参加型の深夜ホームレス実態調査「東京ストリートカウント」です。

終電後〜始発までの深夜帯に、市民ボランティアが路上におられるホームレスの方々の数を調査します。以下の2つの理由で実施しました。

①夜間の実態調査

東京都が行う路上生活者概数調査(昼間調査)ではとらえきれない、終電後の夜間に野宿している人の数を把握し実態を明らかにするため

②市民ボランティアの参加

諸外国のストリートカウントに学び、より多くの市民にまちの中にあるホームレス状態の現状を知ってもらうため

 

当日、参加者は終電の時間帯に集合場所に集まり、3〜4人のグループに分かれて2~3時間ほど調査をします。各グループには担当エリアを示した地図と記録用紙が配られ、徒歩班の場合は担当エリアを隈なく歩いて路上で寝ている人数をカウントします。車移動班は駅から離れた公園や公共施設など各所を周ります。調査終了後は皆ファミリーレストランに集まって、集計作業をしながら参加者同士で感想などを話しています。皆で始発を待ち、解散となります。

これまで行ってきた東京ストリートカウントのタイムラインと概要です。上段のタイムラインに示した通り、東京ストリートカウントは企画・実施・振り返りのプロセスを繰り返しながら多くの市民の参加・協力を得てきました。

下段は、東京ストリートカウントの各回の調査対象地など概要を示したものです。これまで計9晩調査を実施し、山手線沿線の11区を調べました。

以下では、①実態調査の結果②市民ボランティアの参加者データのふたつの視点から東京ストリートカウントの結果や効果を見ていきます。

①実態調査としての結果

対象11区の、東京都路上生活者概数調査の結果(昼間調査:灰色の数字)と東京ストリートカウントの結果(深夜調査:オレンジ色の数字)です。11区合計では、都の調査の約2.5倍にあたる1412名が、深夜路上に寝ておられることがわかりました。

(※都概数調査の結果は2016年8月調査より。東京ストリートカウントの結果は各区における最新の結果を掲載しており、調査月は2016年8月, 12月, 2017年1月, 2月, 3月のいずれか)

 

ほかにも東京ストリートカウントでは、場所や野宿の状態、性別を記録しています。

区別の結果や調査項目ごとの結果など、より詳細な情報をご覧になりたい方は「発表資料」のp.8,9や「補足資料」をご参照ください。(本ページ上部よりダウンロードできます。

②市民ボランティアの参加者データ

続いて、どれだけの市民の参加があって東京ストリートカウントが実施されてきたのかを見て行きたいと思います。

これまで東京ストリートカウントには245名(のべ471名)の市民ボランティアの方々が参加してくださいました。この写真のように多くの市民が集まり、終電後のまちへ繰り出して、深夜に路上で寝ておられる方々、まちの中のホームレス問題を目の当たりにし、そこで思ったことを参加者同士がお互いに話してきました。こうした風景が東京ではじめて生まれ、これまで9晩繰り広げられてきました。

調査に投じられた市民のエネルギーを数値にしてみると、市民ボランティアが調査に費やした時間の総計は約1300時間、歩いた距離の総計は3700km(日本列島縦断をゆうに超える距離)にも上ります。

どのような市民の方が参加されたかを見ると、中学生から60代、28の大学から異なる専門分野の学生や研究者など様々であり、ネットやメディアで知り参加してくださった方もいらっしゃいました。参加者からの感想では、ホームレス問題の見えにくさを指摘する声や状況に驚いたという声が聞かれました。

このように東京ストリートカウントは多様な市民が深夜のまちの風景を共有し、ホームレス問題について話し合い、考える機会となっています。2020オリパラを機に始まった活動が、ホームレス問題を考える市民のつながりをこれまで生み出してきたことは、それ自体が既にレガシーが生まれ始めているということだと私たちは考えています。

◆東京のホームレス人口の推計

ここからは、東京ストリートカウントの結果を基に東京のホームレス人口を推計します。

東京都の昼間調査の人数とストリートカウントの夜間調査の人数が2.5倍であったという結果から、東京都全体のホームレス数は約2650人と推計されました。計算方法としては、国河川を除いた東京都の昼間調査の値を2.5倍し、国河川については小屋やテントが多いことから昼夜の差があまりないと考えられるので、1倍としました。

現在発行されている、世界の主要都市のホームレス人口を比べた資料がありますが、この約2650人という推計値を適用すると、世界都市の中での東京のランキングも変わってきます。

今述べた2650人という推計値は、東京である晩に路上にいる人の数の推計ということですが、この「一晩にいる数」というのは「一年間にホームレスを経験する方の数」とは大きく異なるということが、世界で唯一ホームレス個人をずっと追いかけるデータベースを作成しているロンドンの統計から分かっています。ここでは東京で一年間に一度でもホームレスを経験する人の数を推計します。

ロンドンの統計(下段のカッコ内)によれば、一晩に寝ている数の約10.8倍の方が、一年間ではホームレスを経験されているということです。これを仮に、東京での一晩の推計2650人にかけあわせてみると、東京では約2.9万人の方が年間にホームレスを経験されていると推計されます。また同じロンドンのデータによれば、年間の人数のうちその年にはじめて路上に出てくる方が約65%を占めており、仮に東京に当てはめると、約1.9万人の方が毎年ホームレス状態を新たに経験していると推計されます。

つまり、ホームレス問題は現在の統計で考えられているよりも大きな規模の社会的課題であり、持続的な仕組み作りを必要とするものだということです。

ホームレス問題はある一晩に路上にいる方だけを見ても全体像をとらえきれないものであるということを、イメージ図として示しました。ずっと路上生活をされている方だけでなく、一時的かつ新たに路上に出てくる方も年間で見るとたくさんいて、それに継続的に対応できるような仕組みが必要です。

◆オリパラを契機に、2020東京をホームレスの人々を包摂する「優しい都市」に!

これは過去のオリパラ開催都市における、ホームレスに関するレガシーを示したものです。上段は政策的な取り組み、下段はオリンピックの文化プログラムの一環として実施されたものになります。

例えば左上の2000年シドニー大会の事例では、州の行政部局間で「公共空間にいるホームレスの人のためのプロトコル」という議定書が結ばれました。オリンピックに際してホームレスの方々を排除するようなことはしない、ホームレスの人も他の人と同じように公共空間にいる権利のある市民の一人だ、という理念を示す文書が出されています。そして2012年ロンドンや2016年リオでもレガシーが生まれており、これらの都市ではオリンピックを好機として、ホームレス問題に真剣に取り組んだということです。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは世界が注目する中、どのようにホームレス問題への姿勢を示すのかが問われていると私たちは考えます。

そこで、ARCHから2020年に向け東京が本気で問題に取り組むための提言をここに発表します。

提言①本気で問題に取り組む東京の姿勢の宣言

ホームレスの方々を一方では都市の中で追いやり、一方で支援を提供するのでなく、彼らは公共空間にいる市民である、排除しないと東京が宣言し、包摂に向けて真剣にこの問題に取り組む姿勢を示すことが必要です。これは2000年シドニー大会の際に作られたプロトコルのように、東京でも排除ではなく本気で包摂するのだという宣言をしていこうという提言です。

参考:「公共空間にいるホームレスの人々のためのプロトコル」本文<和訳版>

 

提言②ハウジングファースト✕地域とつながる仕事

上述の宣言をした後に、どのように課題に取り組むかということについて。施設型の支援ではなく、「まず家を、次に支援を」提供するハウジングファーストの仕組みを導入すること、そしてまちの中の仕事をするモデルを提案します。

ハウジングファーストはアメリカで2000年代に広まったホームレスの方々の支援手法で、施設を経由して住宅に移行していくよりも、まず住宅に入りそこで必要な支援を受ける方が本人の安定につながり、住宅定着率が高くなるので、結果として福祉などにかかる社会的コストも削減されるという、データに裏付けられた手法です。ここでは、さらに住宅で落ち着いたら、地域の人たちと交流のあるようなまちの中の仕事をするモデルを提案しています。

 

提言①②を実現するための市民の力

そして最後に、提言①②を実現するための市民の力として、ホームレス問題を考える市民のネットワークが既にストリートカウントを通じて生まれ始めているということがあります。

東京ストリートカウント参加者の245名を起点としながら、市民が交流し、東京で、地域で、どういった対応をしていくのか共に考えていく、そのプロセス自体を東京五輪のレガシーにしていきたいと考えます。

本会見で結果報告した東京ストリートカウントは、オリパラを機に生まれた活動であり、市民245名がこれまで参加してくださったということで、もうレガシーは生まれ始めています。

今後も我々ARCHはオリパラに向け市民のレガシーを共に創っていく活動を行っていきますので、どうぞよろしくお願いします。

※引用資料

  • p.7, 8,12: 東京都福祉保健局(2016)平成28年夏期 路上生活者概数調査の結果http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2016/10/21/03.html

  • p.13: Greater London Authority, MD1532 Rough Sleeping Programme 2016-20

  • p.14: Greater London Authority, CHAIN Annual Report(2010-2015年度版)Department for Communities and Local Government, Rough Sleeping in England(2010-2015年)

  • p.17,19: NSW Department of Family and Community Services(2014)Protocol for Homeless People in Public Places

  • p.17: London Delivery Board(2009)Ending Rough Sleeping

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会見の内容の紹介は以上です。

当日の配布資料のうち一部を掲載しています。配布資料の全データはページ上部よりご覧いただけます。

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